【相模×伊豆の城】小田原城、山中城、韮山城など、250万石・小田原北条氏ゆかりの城々を巡る

関東

山中城の「障子堀」

2022.08.21

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城リスト

4.韮山城
5.伊豆長浜城

4.韮山城

形　態	平山城址	難易度	－－－－－
比　高	35ｍ	整備度	☆☆☆☆－
蟲獣類	－	見応度	☆☆☆－－
	駐車場　→　登城口　→　主郭部
高　さ	－　　／　　35ｍ
所要時間	4分　　／　　5分

指　定	－
遺　構	曲輪、土塁、堀切
歴　史	明応2年（1493年）室町幕府第11代征夷大将軍・足利義澄の命で、義澄の母と弟の敵・足利茶々丸を討伐するべく、伊勢盛時（37歳）は京都から伊豆へ派遣された。そして拠点として韮山城を築城した。足掛け6年で足利茶々丸の討伐を果たすと、盛時は出家し、名を“早雲庵宗瑞”と改め、生涯伊豆を離れることは無かった。
駐車場	駐車場 – Google マップ　無料駐車場（30台）
住　所	静岡県伊豆の国市韮山山木733-2
トイレ	駐車場にあり
訪問日	2022年8月7日（日）曇り時々晴れ時々雨

伊豆山中城から約40分。江川邸の近くの無料駐車場に車を停め、韮山城を目指す。

あの山が韮山城。左の城池は当時は湿地帯で、韮山城の東を守る天然の堀だった。

左右どちらからでも行けるが、三の丸から順番に見たいので右ルートへ行く。

4-①登城口

4-②三の丸

三の丸は、静岡県立韮山高等学校のグラウンドになっている。城址が学校になっているパターンはよく見られるが、韮山城のように主要部分をしっかり残して保護してくれていることも多く、城好きとしては感謝しかない。（この高校のＯＢの方が「韮山城を復元する会」を立ち上げて活動しているとの事。）

4-③権現曲輪

権現曲輪。

4-④二の丸

二の丸。周囲に土塁が巡らされている。

4-⑤本丸

本丸。

静岡県立韮山高等学校が見えた。比高35ｍのはずだが、もっと高い気がする。

韮山城は、伊勢盛時が築城した。京都足利将軍家の重臣・伊勢氏の家中で№2だった盛時は、単身京都から伊豆へやって来た。そして足利一門の茶々丸に戦を仕掛け、足掛け6年の死闘の末、茶々丸を討ち取った。この事実だけ聞くと異様な出来事に思える。この事件を理解するためには、時の将軍の御台所みだいどころだった日野富子について知る必要がある。

日野富子は、室町幕府第8代征夷大将軍・足利義政の正室である。20歳の時に産まれた長男がすぐ夭折した際、腹いせにその乳母を殺し、義政の4人の側室を追放している。それから第2子第3子を産むが、どちらも女の子だった。後継者のいない状態が長く続くことを危惧した夫・義政は、仏門に入っていた弟（義視よしみ）を還俗させ、将軍後継者とした。しかしその後すぐに、富子が男の子（義尚よしひさ）を産んだことで事態は暗転する。義政の弟・足利義視よしみと、我が子を将軍にしたい富子の間で、対立が生まれる。冨子はB面作戦として、義視を懐柔するため実妹の良子よしこを義視の正室にした。しかし作戦の甲斐も無く、管領で義視の後見人・細川勝元と、義尚派で但馬の太守・山名宗全そうぜんの間で戦乱が勃発し、畿内近国の守護や国衆を巻き込んでの大戦おおいくさとなった。世に言う応仁の乱である。

そんな応仁の乱の最中の文明5年（1473年）、足利義政（37歳）は将軍職を退き、足利義尚よしひさ（9歳）が第9代征夷大将軍となった。だが実際の支配者は富子であり、富子の思い描いていた天下が実現した。

それから約10年後、若武者になった義尚が傀儡かいらい将軍からの脱却を試み始めたことから、富子の天下は陰りを見せる。義政は義尚から政庁を追われ東山山荘（のちの銀閣寺）を築き隠居し、富子は政庁から出て行かなかったためか義尚のほうが出て行き、富子は政治との関わりを断たれた。この3年前に徳政一揆が起きているのだが、その理由はこうだった。20年前から京都七口に関所が設けられ、御所の修復と祭礼の費用の名目で関銭を徴収するようになっていた。しかしそのほとんどが富子のポケットマネーになっており、それを知った民衆の怒りは頂点に達し、徳政一揆は起こったという次第だ。そして富子はこれを武力で弾圧し、押さえ込んだ。富子の資産が今の貨幣価値で60億円だったということからも、その悪政ぶりが窺える。そんな富子が実の息子から愛想を尽かされるのも仕方がないだろう。

長享3年（1489年）、足利義尚が25歳で病死すると、富子と敵対している義視よしみの子・義材よしき（母は良子）が将軍の座を継ぎ、第10代征夷大将軍となった。そして富子は再び天下を我が物にするために新たな構想を練り始める。着目したのは同じ日野一族の武者小路むしゃのこうじ姉妹だった。この姉妹は2人とも現代に名前が伝わっていないので、このブログでは「姉小路あねこうじ」「妹小路いもこうじ」と呼ぶことにする。姉小路は、足利義政の庶兄・足利政知まさともの妻だ。政知は元々仏門に入っていたが、将軍・義政の命で還俗し、訳あって今は伊豆の国主になっていた。嫡男は先妻の子・茶々丸で、姉小路の子は次男と三男で伊豆足利家を継ぐことはないため、次男・清晃せいこうは出家して京都にいた。妹小路は関白・九条政基まさもとの妻で、実子は管領・細川政元の養子となっていた。

富子のシナリオはこうだ。細川政元の力を借り、姉小路の子・清晃せいこうを次の将軍の座に就け、義材よしきを追放する。細川政元は、父・勝元と共に応仁の乱では富子と敵対していたので、妹小路に説得させる。将軍は姉小路の子・清晃が、細川家は妹小路の子・澄之が、伊豆足利家は姉小路のもう1人の子・潤童子が、それぞれ継ぐ。武者小路姉妹にとっては自分たちの子が名家を継ぐこと、細川政元にとっては九条家や日野家との結びつきが強くなり細川家も安泰になることが、それぞれのメリットとなる。富子にとってはもちろん清晃せいこうを傀儡かいらい将軍として操り、自らが天下を牛耳れることがメリットである。

延徳3年（1491年）足利政知が病死すると事件は起きた。政知の長男・茶々丸（20歳前後）が、義母・姉小路と三男・潤童子を殺害し、力技で伊豆足利家の当主となったのだ。伊豆足利家の次期当主は茶々丸と決まっていたが、富子の陰謀により潤童子が跡を継ぎ自分は排除されるだろうことに気づいていた茶々丸は、父がいなくなったタイミングで事を起こした。

それから2年後の明応2年（1493年）、富子と細川政元のクーデターは成功し、義材よしきは追放され、清晃せいこう改め足利義澄よしずみ（12歳）は、第11代征夷大将軍に就任した。世に言う「明応の政変」である。再び富子の天下となったが、その3年後に57歳で富子はこの世を去った。

将軍となった義澄は、茶々丸の討伐を家臣へ命じた。そして誰に足利茶々丸を討伐させるかで名前が挙がったのが伊勢盛時だった。長享元年（1487年）に駿河の今川氏の内乱を収めた実績を買われたものだ。足利義澄は、母（姉小路）と弟・潤童子の仇討ちを伊勢盛時に命じた。今川氏の内乱については、興国寺城【駿河：裾野＆沼津の城】🔎で書いている。足利義材と足利義澄のその後については近江八幡山城【近江：湖南の城】🔎で書いている。

こうして明応2年（1493年）に再び駿河へ来た伊勢盛時（37歳）は、甥で今川家当主・今川氏親（22歳）とその母で盛時の姉・北川殿の援助も受け、拠点となる韮山城を築城し、足掛け6年で足利茶々丸の討伐を果たした。その後盛時は足利義澄より伊豆の国主に任命され、同時に出家もし“早雲庵宗瑞そううんあんそうずい”と名乗った。茶々丸の重臣だった狩野氏を一門に加え伊豆の統治を行うとともに、関東の山内やまのうち上杉氏とも戦いつつ、今川氏親の要請があれば今川軍の大将も兼任して各地を転戦した。

しかしながら、宗瑞そうずい（伊勢盛時）は生涯韮山城を本城とし、伊豆から拠点を移すことは無かった。このことは茶々丸討伐後に出家し、宗瑞と名乗ったことに関係しているのではないかと思う。今川の内乱を収めるため駿河に来た際、宗瑞は伊豆の足利政知とも交流があり、土地を拝領している。茶々丸とも交流があって、義澄の命めいとはいえ死なせてしまったことを不憫に思い、弔い続けたのでは無かろうか？

永正16年（1519年）、宗瑞はこの韮山城で亡くなった。享年63歳。

5.伊豆長浜城

形　態	海城址	難易度	－－－－－
比　高	0ｍ	整備度	☆☆☆☆－
蟲獣類	－	見応度	☆☆☆－－
	駐車場　→　登城口　→　主郭部
高　さ	－　　／　　30ｍ
所要時間	－　　／　　5分

指　定	国指定史跡
遺　構	曲輪、土塁、堀切
歴　史	天正7年（1579年）駿河に侵攻してきた武田勝頼が伊豆との国境近くの沼津に三枚橋城を築城したため、四代目・北条氏政は、韮山城を守る支城として海岸沿いに長浜城と獅子浜城を築城した。
駐車場	長浜城跡見学者駐車場 – Google マップ
住　所	静岡県沼津市内浦長浜176
トイレ	駐車場にあり
訪問日	2022年8月7日（日）曇り時々晴れ時々雨